インタビュー!
 脚本・演出 宇野正玖さん

宇野正玖

本日は脚本・演出の宇野正玖さんにお話を伺いました!

――今日は、「サンドリヨン」「OZ♀4♂3」に引き続き、脚本・演出の宇野正玖さんにお話を伺います。
早速ではありますが、今まで宇野さんが書かれてきたお話と今回の【マーメイドブーツ】を含み、チームジャックちゃんで手掛けていただいているお話とでは、結構、趣が違うように思われますが、普段はどういったテイストのお話をされているんでしょうか?

「コア」ですね。普段は。割と。

――「コア」ですか?

猟奇殺人鬼と呼ばれるような重大な犯罪を犯した人物や人の持っている深い「悩みの種」のようなところにフォーカスしていたり、歴史的な事象を深く考察しながらオリジナリティを加えた話だったり、っていう普通に観るなら重たいかな、っていう雰囲気のものをやっているんです。普通なものは飽きてきている方々に向けたものですね。

――賛否両論、というよりむしろ観る人を選ぶお話をされてることが多いんですね。

そうですね。そこまでいっちゃうと「重たすぎて胃もたれするなー」っていう人も出てきちゃうんですよね。だから、「胃もたれ」しちゃって「もうちょっと安心してお芝居を観てみたい」…って安心ってのもおかしいかもしれないんですけど、チームジャックちゃんでは、「安心して観られるお話」に元々の重たい印象っていうのをエッセンスで取り入れながら、全体的に「観やすいもの」…観やすいっていうのも少し語弊があるかもしれないんですけど、年齢層や人を選ばす、バシッと起承転結が分かりやすいというか、かなり多くの方に観て楽しんでいただける内容のものを、それでいて海千山千のものとは違うオリジナリティのあるものを、提供できているんじゃないかと思います。

――そんな中で特に「気を付けていること」「念頭に置いているようなこと」はありますか?

チームジャックちゃんでは、主に「童話」をモチーフにしているところから始まってその主題の中で脚本を書いたり演出をつけたり、っていうのをしているわけなんですけども、一番重点を置きたいところが「あくまでも人間の歴史の中で行われている物事なんだよー」ていうところですね。忘れたくないなっていうところと言いますか。

――観にいらした方が「日常生活からかけ離れたものすごいファンタジー」でも「ああこれは“お話”なんだなー」と感じるものでもなく「まるでそれが現実であったような感覚になる」ということを目指しているということなんでしょうか?

人類の歩んできた、この300年~400年の中で実際にこのようなことが行われていた、過去に携わった話でいうならば「シンデレラ」や「オズの魔法使い」のような事が実際に起こっていたとしたら、という捉え方で取り組んでいます。
その捉え方をするならば、今回やる「人魚姫」であっても、実際は社会的な人間関係であったり国家間の問題であったり、というものも存在するはずなんです。

――その違いが「現実」と「物語」の違いであったりもしますよね。

そうですね。物語っていうのは元々、「○○が~~でした」といった語り口が繰り返されるような「紋切り調」と言われるもので描かれているものが基本でした。、で、それっていうのはやっぱり、その、主に子供に向けて書かれているものが多くて、その読み手の想像力をより発揮させていくために、「深い内容のことは言っていかないよ」という前提で描かれてきたんですよね。日本昔話であるとかグリム童話であるとかアンデルセンであるとか。

――複雑な人間関係などは割愛してきた、というところですね。

そうそう。基本、伝承で聞き伝えてきたのでそこから何か独自の色味をつけたりせず「元々あるものだよ」「これが基本、原版だよ」っていう暗黙のもと作られてるところっていうのがある。というところに、それじゃあ、独自の色味、独自の「見方」で捉えてやっていこう、人間の行っている日常生活というものを取り入れてやっていこう、というのがあります。

――となりますと「今回の見どころ」としましては、「ただのおとぎ話では終わらない人間ドラマ」というところになるんでしょうかね。

そうですねー。まあ「ただでは終わらない」というのを名目に作っているというよりは、元々、その「ただでは終わらない」じゃないですか、童話って。まず、びっくりするところからいろいろ始まるじゃないですか。「人魚姫」も「人魚がいました」…マジで!?ってところから始まりますよね。

――人魚がいる、という事実は揺るがないということでお話が始まりますね。

いきなりか!っていうね(笑)「人魚姫が15歳になったので、海の上に上がってきました」それもびっくりする事象なんですよ。童話だと受け入れられちゃっているところですけど、でも、やっぱり、そういう点がびっくりしないための前提条件っていうのが必要になってくる。で、そういう「何故こうなったのか」というのを突き詰めていくと、結果的に「一風変わった話」って思われてしまうんですけど。単純にひとつひとつ理論立てて考えていってみただけだったりします。

――真面目に真面目に「童話」というものをリアルな世界に映しこんでみた時にそういう理論立てが必要であって、真面目に取り組んだ結果が「新しい!」と言われることになった、ということですね。

ほんとに真面目に考えただけなんですけどね。科学や生物の段階から考えていったときに特殊なものになってしまうから一個ずつ理由が必要だなって。「王子が海で溺れました」っていうところに関しても「何故“王子”が海で溺れているのか」

――何故、高貴な身分の王子が危険を冒してまで王宮から外へ出なければいけなかったのか、その理由が必要ということですね?

そう。それが必要なんですよ。王子が危険な船旅に出るためにはそれなりの事情があったんだろう、と。何かしらの事情で逃げ出したとか。そんな何かしらの理由がなければ、王子が大荒れの海に出航して難破するはずがない、そんなダメな国は存在しないだろう、と。そんなよっぽどの事件が背景に起きているんだ、というところからそもそもこの【マーメイドブーツ】は始まっている、と。まあ。そんな感じですね。

――童話では語られていない「何故?」の部分を映し出した物語である、ということですね。「新・人魚姫」ではなく事象を突き詰めた結果、一般に知られている「人魚姫」の中にもそういった背景があったのではないか、そこを抽出したお話である、と。
なるほど、ここまで「脚本」サイドのことを多くお話していただいたと思うので、ここからは「演出」サイドのお話も伺えたらと思うのですが、稽古が始まって1ヶ月経たないくらいではありますが、どういった印象ですか?

そうですねー、まあ、「人が多くて大変だな」以上です(笑)

――えーと(笑)あれですね。今回シングルキャストやアンサンブルを含め、ひとチーム20人以上のキャストが入り乱れることになりますから、その登場人物たちがそれぞれ持っている思惑や矜持なんかも考えつつとなると「大変」ということばが出てきた、という感じですよね(笑)
今までよりも広い劇場での公演にはなりますが、狭い「舞台上」で表現するには、難しい点がある。そして、見どころのひとつでもある、ということで、いいんですよね?

そうですねー(笑)

――(笑)演出上でキャストに「留意してもらいたい」というか「気を付けてもらいたい」と、念押しではないですが、心がけてもらっていることなどはありますか?

主にやっぱり、前回、前々回でも気を付けていることではあるんですけども、元々「海外の童話」をモチーフにしている、というところから「西洋らしい立ち居振る舞い」ていうものを役者間にも伝えて、我々は東洋人ですけれどもその中で「それらしく振舞っていく」っていうことを気を付けています。

――今回も、王家や貴族といった高貴な方々がよく出てくるということでそういった身分の人間の立ち居振る舞いっていうものを役者たちに気を付けて演じてもらっていっている、というところですかね?

その理由もですね、最初の方でもお話したかと思うのですが「実際にあった物事なんだよー」と提示するためには、この現代・平成の日本人の日常感ってものを出すと伝わりにくくなってしまう、というところなんですよね。

――「実際の出来事」であるようには提示しつつも、あくまでもそれは「西洋の、現代日本とは違う時代背景の場所での、現実」として観ていただくために必要な要素、ということなんですね。

まるで「シェイクスピア」をやっていくようなそんな印象で、本当の「演劇」本当の「お芝居」というものをやっていかなければならないな、と。
そういったところは、「一生懸命」取り組めるところなんじゃないかな、と思いますね。
「やりがいがある」と言えるところです。

――では、最後に【マーメイドブーツ】。どういったところがキーワード、といいますか、キーポイントとなるところと思われますか?

そうですねー。元々チームジャックちゃんの方から脚本を依頼された時に「タイトルは【マーメイドブーツ】でお願いします」っていう風にいただいたんですよね。で、そこから話を起こしてください、ていう。だから、カジュアルなタイトルではありますけれど脚本上でも演出上でも、かなりフォーカスしていっているところはあります。
「マーメイド」そして「ブーツ」という言葉を前にしたときに、「人魚姫が人間の姿になる」ってそれからは勿論裸足じゃないだろう、と。で、そこで履いていくものが「ブーツ」なんだな、と私はそう受け取りました。で、「ブーツ」を履いているということは活発に動き回っているだろう、と。そして動き回っているからには人魚はただ町娘の姿でうろうろしているわけではなく、いろいろな社会現象に巻き込まれていくことになるだろう、と。そういう流れで、今回の「人魚」は「戦士」。
「戦場(いくさば)に出る、女。元は、マーメイド」これだ!と。
そこが「売り」なのではないかな。と。そう思っています。

――「戦う女性」ということですね。アンデルセンの人魚とは違う結末である「泡にならずに王子を刺してしまった」弱い部分と、今戦に身を投じている、精神というよりは物理的にかもしれませんが、強い部分、という女性の弱さと強さが見えるというのがポイントといったところでしょうか。

良いことばかりでも悪いことばかりでも決して美しいだけの話でもなく、叶わぬことを望んでしまい、結果愛する人を殺めてしまった罪の意識や葛藤などを抱えながら、人間関係や社会情勢などに巻き込まれて苦しみながらそれでも生きていく、正に「大人のための童話」「大人の人魚姫」であると思いますね。

――なるほどつまるところ「乞うご期待!」といったところですね。
今回は【マーメイドブーツ】脚本・演出の宇野正玖さんにお話を伺いました。どうもありがとうございました!


宇野 正玖(うの まさひさ)

Voyantroupe 主宰 脚本・演出家
第14回日本劇作家協会新人戯曲賞優秀賞を受賞。
独特の世界観、人間観をもって作・演出にあたり、容赦のない想像力でまだ誰も見たことのない景色を求め続け、 人間の根底に生でふれるような大胆な構想でドラマチックな舞台と人生を作る。近年では映画作品や他劇団への脚本提供など幅広く活動している。

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